ケータイ恋愛小説家
「もう、帰ったって」


「はぁぁああ?」


何それ?

律子さん、もう帰っちゃったの?


「写真はもう撮ったからいいってさ」


「そうなんだ……。いつの間に撮ったんだろ……」


「さぁな。で、『どうせだから、お祭り楽しんできて』だってさ」


蓮君は口元を手で押さえながら、「はめやがった……」とかなんとか、ぶつぶつ呟いていた。


「はめやがった? どういうこと?」


あたしは蓮君の言葉の意味がわからず、彼の目をじっと覗き込む。

気のせいか、蓮君の顔がいつもより赤い気がする。


「別に、何でもねーよ。それより、せっかくだからもうちょい見ていくか」


蓮君はまたあたしの手を取って歩き出した。

その手の握り方がさっきよりも強くて、あたしはまたドキドキする。


「蓮君、手……。もう繋がなくていいんじゃない?」


撮影は終わったんだもん。

恋人のふりするのも、もうおしまいだよね。


「ダメ」


「え?」
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