ケータイ恋愛小説家
「お前、迷子になりそうだから」


蓮君はあたしの顔も見ずに、そう答えた。

な、なによー!

迷子だなんて、また子供扱いして……。


歩きながら隣にいる蓮君の顔をそっと盗み見た。



さっきのあたしの告白……


聞こえてなかったよね、きっと。


その時ふいに美雨ちゃんの顔が脳裏をよぎった。


良かった……聞こえてなくて。

あたしの気持ちはやっぱり伝えちゃダメなんだ。


『告白って何のためにするのかな?』

前にそう言った綾乃の言葉を思い出す。


今あたしが、蓮君に気持ちを伝えても、誰も喜ばないし誰も幸せにならない。

美雨ちゃんと蓮君、大好きな二人を困らせるだけなんだもん。


昔、美雨ちゃんの大切な宝物だったブレスレットを欲しがって、泣いて駄々をこねた小さな子供だったあたし。

あたしはもうあの頃のあたしじゃない。

例え欲しくて欲しくてしょうがないものが目の前にあったって、駄々をこねるような恋をしちゃダメなんだ。

ましてや蓮君は物じゃない。

彼の幸せをそっと見守るような……そんな恋の仕方もあるはずなんだ。


だったら、この気持ちはやっぱりずっと奥の……

誰にも気づかれないような場所で封印しよう。


それがいいんだ。


――そうするしかないんだ。


あたしは蓮君に手を引かれながら、そんなことを考えていた。



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