ケータイ恋愛小説家
久しぶりの蓮君の部屋。

湿気を帯びた部屋は、蓮君の香水の香りと雨の匂いがした。


「ちょっと濡れたな……。そのままじゃ風邪ひくし、シャワーあびるか?」


蓮君はあたしにタオルを一枚放り投げた。


「えっ……うん。あ! でも、ダメだ。着替え、律子さんちに置きっぱなしだ、あたし」


「あ、そっか」


すると蓮君はクローゼットを開けて、自分のTシャツとスウェットを取り出した。


「じゃ。とりあえずオレの服でいいだろ?」


「うん……。じゃ、シャワー借りるね……」


あたしはそれを受け取って、浴室へ向かおうとした。

だけど、その足がすぐに止まってしまった。



「や、やっぱいいや」


あたしは手にしていた服を蓮君に押し返した。


「たいして濡れてないもん。タオルで拭けば後は自然に乾くし……」


蓮君は眉根を寄せて、そんなあたしをじっと見つめる。


「何遠慮してんだよ?」


「遠慮じゃなくて……その……」


あたしはボソボソと答える……。

あまり深く追究しないで欲しい。

だって……だって……。


「風邪ひくだろ?」


「蓮君……そうじゃなくて」


「ん?」


あたしは消え入りそうな声で呟いた。







「……あたし、下着つけてないから」


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