ケータイ恋愛小説家
彼女の恋
「あれー？　日向――？」


突如能天気な声が響いて、公園内の空気をガラリと変えた。

あたしは驚いてその声の方へ顔を向ける。


公園の入り口付近に立って、ニヤニヤ笑いながら手を振っているのは、クラスメイトの春奈だった。

春奈は「おいでおいで」とばかりに、手を曲げてジェスチャーする。


あたしはベンチから立ち上がって彼女の方へ足を向けた。


「ちょっとちょっとー！」


春奈は近づいてきたあたしの腕をひっぱって、さらに自分に引き寄せた。

あたし達は蓮君に背をむけて、まるで内緒話をするような格好になってしまった。


「ね、ね。あの人、かっこいいね。日向、彼氏いないとか言ってたくせにぃ……いつの間に？」


声のトーンを下げてヒソヒソと囁く春奈にあたしは顔を真っ赤にして否定した。


「ちっ。違うって……！」


「ふーん。ま、いっや。それよりさぁ……」


相変わらず声を潜めながら話す春奈の言葉に、あたしは一瞬言葉を失った……。



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