ケータイ恋愛小説家
春奈から聞いた話。


それは、数学の田中先生の婚約だった。

相手は同僚の家庭科の小柳先生。

小柳先生は田中先生よりも８歳も年上のバツイチ。

小学生の子供がいる……って聞いたこともある。


もちろんどんな事情があろうとも、恋愛関係は二人の自由のはず。

だけど、離婚歴があって子連れの小柳先生と女生徒から人気のある田中先生の婚約となれば、その話題はかなりセンセーショナルなものだったようだ。

正式な婚約を公にしたとたん、この噂はあっという間に広まった。






「……どうしよう。綾乃が……」


あたしは蓮君に、綾乃のこともざっと説明した。

田中先生をずっと好きだったこと。

だけどその気持ちを誰にも言えず一人で抱え込むことしかできなかったこと。


田中先生の婚約を知った綾乃の気持ちを考えると、胸が締め付けられるようだった。


――先生を困らせたくない……

そう言って自分の気持ちを封じ込めようとした綾乃。


ねぇ、綾乃……。

いったいどんな想いで、春奈の話を聞いていたの……？



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