ケータイ恋愛小説家
蓮(レン)君は、あたしのその声を聞いたとたん、乱暴に靴を脱ぎ捨てると、部屋の中にドカドカと入って来た。


「大輔、何やってんの? 女子高生相手に……まさか無理やり?」


そう言って、大輔君をジロリと睨む。


慌てて大輔君はあたしの上から飛びのく。


「ち……違う違う!」


ブンブンと顔と手を振る大輔君。


「え? え? ……つか二人、知り合い?」


大輔君は状況が把握できないようで、指差ししながら、あたしと蓮君を交互に見比べる。


「……っく…ひぃっく…ぐす……」


その間もあたしの涙は止まらない。

一応起き上がったものの、ベッドの上にペタンと座ったまま俯き、ポロポロと零れる涙を手で拭う。


その様子を見ていた蓮君が口を開く。


「お前……やっぱり……」


蓮君は、大輔君の胸倉を掴むと、拳を振り上げた。


「ち、違うって!」
「……蓮君!ちがっ……」


あたしと大輔君の声が重なったその時……




あたしは生まれて初めて、人が殴られる瞬間を目撃した。



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