ケータイ恋愛小説家
「……お前何やってんの?」


目の前には眉間に皺を寄せ、見るからにイラついている蓮君。

テーブルに片肘をついてあたしを睨む。

もう片方の手は、吸おうとして取り出したはずのタバコでトントンとテーブルを叩いている。


「ごめんなさい」


あたしはいつも以上に体を小さくして、ベッドの側面を背もたれにする格好で、ベッドとテーブルの間……蓮君の斜め前にちょこんと正座している。


今あたしは蓮君の部屋にいる。



あの後……蓮君が大輔君を殴ってしまった後、あたしは誤解をとこうと必死だった。

とにかく悪いのはあたしだという事。

興味本位で男の人の部屋に簡単についてきたあたしに非があるという事。

それから、その気も無いのに「男の人を知りたい」だなんて、誤解を招くような言い方をしてしまったこと。

それらを全て話して、大輔君にもひたすら謝った。

大輔君は、「オレも軽率すぎた」と謝ってくれた。

全ての誤解が解けて、なんとなくその場は丸く納まったような気がしていた……。


だけど……


あたしはチラリと目の前の人物を盗み見る。

ただ一人だけ、まだ納得してない人物がいるんだよねぇ。

あたしは、大輔君の部屋から蓮君によって連れ出され、今彼の部屋にいるってわけ。



「フゥ―――」


蓮君は大きなため息をつくと、ほんの少し顔の表情を緩めた。


「ま。とりあえず、何か飲む?」


そう言って、立ち上がると冷蔵庫が置いてある方へ向かった。
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