ケータイ恋愛小説家
蓮君の部屋は大輔君の部屋の隣だった。

二人は同じ大学の同級生なのだとか。


部屋は同じ間取りのはずなんだけど……。

とてもそうとは思えない。


シンプルな家具で統一された部屋。

大きなスピーカーのオーディオ機器やパソコンなど機械類は充実しているものの、キレイに整理整頓されているせいか、ほとんど物がないように感じられる。

壁にはモノクロ写真が数枚、無造作に貼られている。


「っつっても、日向が飲めそうなもん、お茶しかねーな。お茶でいい?」


そう言って、冷蔵庫の中を物色しながらあたしに尋ねる。


「うん」


あたしはポツリとつぶやいて、その蓮君の横顔をそっと見つめた。


蓮君……木ノ下蓮哉(キノシタレンヤ)。

年はあたしの4つ上だから、大学3年生。

蓮君は、あたしの幼馴染。

あたしが物心ついた頃から隣に住んでて親同士も仲が良かった。

だけど、蓮君のお父さんの転勤で両親が引っ越すことになり、すでに地元の大学に進学を決めていた蓮君だけがこちらに残り、高校卒業と同時に一人暮らしをすることになったのだ。

蓮君に会うのは、引っ越して以来初めてだから、約2年ぶり。


こういうの、“大学デビュー”っていうのかなぁ。

あたしは蓮君の変化に驚いていた。


あたしの知っている高校生までの蓮君はとても地味で野暮ったかった。

髪は美容院ではなく床屋でカットしたような短髪。

当然カラーリングなんてありえない。

流行りとは無縁の、大きな黒ぶちメガネ。

私服は、多分蓮君のお母さんが買っていたのだろう。

いつも同じような服装で、お世辞にもオシャレとは言えないような感じだった。


だけど……

今目の前にいる彼は……

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