ケータイ恋愛小説家
プッ……。


思わず吹き出しそうになったら、蓮君がそっとあたしの手を握った。


何かと思って顔を上げると、蓮君は「しぃ……」って感じで、ひとさし指を自分の口にあてている。


キョトンと見上げるあたしの顔に影ができた。


蓮君が優しくあたしの唇に自分の唇を合わせた。


看護師さんはまだお説教に夢中だ。

そしてあたし達に背を向けている4人も……


誰にも気づかれないように、あたし達はそっと口づけていた。


なんだか悪いことをしてるみたいでドキドキしちゃう。


キスをされながらそっと薄目を開けると……


窓の外に向日葵の花が見えた。


――「ヨカッタネ」


そう言って微笑んでくれているような気がした。


あたしが生まれた日にお母さんが見た向日葵も、あんな風だったのかな……。


真っ青な空、白い入道雲、そして向日葵の黄色。

その鮮やかな色彩が眩しい。

今のあたしの幸せな気分を色で表現したら、こんな感じになるんじゃないだろうか。


太陽の光をいっぱいに浴びた向日葵があたし達を祝福してくれているみたい。


そんなこと考えながら蓮君の唇と彼のぬくもりを感じて……


あたしはまたそっと目を閉じた。



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