ケータイ恋愛小説家
「美雨ちゃん、早かったね」


まだ昼間だ。

デートにしちゃ帰ってくるの早いんじゃない?


「うん。幸樹、今からバイトなんだって」


そう言う美雨ちゃんの手には小さな紫陽花のブーケが握られていた。


「美雨ちゃん……それどうしたの?」


「んー? 幸樹に貰ったんだ」


美雨ちゃんは戸棚から花瓶を取り出して水を入れると、包みをはずしたブーケをそこに活けた。


「めずらしいね。こんな時期に紫陽花?」



「うん、もう時期は過ぎてるのにね……。幸樹がね、わざわざ探してくれたの」


愛しそうに紫陽花の花に触れながら、美雨ちゃんはとろけそうな笑顔でポツリと呟いた。






「紫陽花って……あたしが一番好きな花なんだぁ」


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