ケータイ恋愛小説家
「やたら意地悪な男に振り回されながらも、なぜかヤツに惚れる女の話しでしょ? あと、たいして可愛くもない子が、イケメン集団にモテまくりで、毎回きわどくせまられてる話……とか?」


確かにその通りなんだけど……。

なんかこうして言葉にされるとすごく陳腐に聞こえる。


「実際ありえねーだろ。意地悪っつても限度があるよ。この男は、男から見てもほんと最低なヤツだよ。こんなのに惚れるって、この女もおかしいんじゃねーの? なんで、ヒロインがヤツに惚れたのかが、全然こちらに伝わってこない。どう考えてもルックスだけだろって感じ」


「なっ……」


「だいたい、なんだよ? やたらと出てくる中途半端にエロいシーンは。全然リアルじゃねーし。あんなの、『あたし処女です』って言ってるようなもんだよ」


「なによー! そんな言い方ないじゃん!」


あたしはカッとなって、携帯を鞄にしまうと立ち上がった。


「も、いい。蓮君には頼まないから!」


蓮君はそんなあたしに目もくれず、平然とアイスコーヒーを飲んでいる。



「いーよ。別に辞めても。オレは美雨ちゃんのアドレス、ゲットできたし」



美雨ちゃん。

小菅美雨(コスガミウ)。

あたしのお姉ちゃん。

歳はあたしの4つ上で蓮君とは同級生。


一昨日、わたしは家に帰って、蓮君にアドレスを教えていいか美雨ちゃんに尋ねた。
(もちろん小説のことやコンパに行ったことなどは全てふせてある)

美雨ちゃんは二つ返事でOKしてくれた。



美雨ちゃんはあたしと違って、女としてのスペックはかなり高い。

誰が見ても美人だと言うであろう容姿。

子供の頃から評判の美少女で、何度も芸能界やモデルにスカウトされてる。

美雨ちゃんはあたしが通う高校の卒業生で、今は同じ敷地内にある大学の3年生。

うちの高校には、美雨ちゃんを一目見ようとする男子学生が集まって人垣ができたという逸話も残っている。

去年はミスキャンパスにも選ばれて、雑誌にも取り上げられたらしい。
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