ケータイ恋愛小説家
それにしても…

蓮君が美雨ちゃんを好きだったなんて、全然気付かなかったな。

まぁ、あんな美人が近くにいたら、好きにならずにいられないか。



なんだろ……。

軽くショック……。



でもこういうことには慣れっこだ。

小さな頃からずっと比べられて育った。

誰からも愛されてちやほやされる美雨ちゃん。

一方、何の取り得もなく存在感の薄いあたし。

美雨ちゃんのことは好きだけど、同時にコンプレックスも感じていた。

美雨ちゃんと一緒にいると、誰もあたしを見てくれない。

引き立て役のあたしには、そこに自分の居場所がないような気がして苦しかった。



そんな時、ケータイ小説に出会ったの。

小説を書いて、読者がついて……更新を楽しみに待っていてくれる。

そんなことがあたしの支えになってた。

生まれて初めて誰かに必要とされてるようでうれしかったの。

あの場所だけは失いたくない……。


「で、どうする?」


立ち上がったまま動き出さないあたしに、蓮君が上目遣いで訊いてくる。

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