ケータイ恋愛小説家
「だから! 数学教えて―――!」


すっかり忘れてたよー!

次の数学の授業。

例のページ、全部あたしが解かなきゃダメなんだった。

あたしの頭の中では今、烈火のごとく怒りをあらわにする田中先生の顔が浮かぶ。

やだ……怖すぎだしー。

あたしは顔をブンブンと振る。


「お願い!」


顔の前で両手を合わせてお願いのポーズを取る。

だけど……


「無理!」


蓮君からはあっさり拒否されてしまった。



「な…なんで―――?」


あたしは蓮君のシャツの裾を握りながら、上目遣いで懇願する。


「放せっ。つかマジ無理だって。オレ……数学ダメだもん。数学苦手だから、文系にしたんだってば」


「ええ……」


でも、そりゃそうか。

大学生だからって、数学が得意なわけじゃないもんねぇ……。

あたしがシュンとうなだれているその時


「あれ? 蓮哉……?」


あたしは背後から聞こえたその声の方へ振り返り、顔を向ける。


「……とヒナちゃん」


あたしの視線の先にはバツ悪そうな顔で佇む大輔君がいた。
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