ケータイ恋愛小説家
蓮君の、男の人にしては薄い、ほんの少し口角の上がったキレイな唇。

あたしの全神経はそこに集中してしまい、目が離せなくなってる。

そして、あたしの唇は彼の口から漏れる吐息を感じた。


「目、閉じねーの?」


「だって。閉じてたら見えないもん」


「そか」


そう言って蓮君の顔は益々近づいて、唇が触れるまであと数ミリ……ってとこで寸止め。


そしてニヤリと笑って

「これでい?」

と言ってあたしから顔を離した。


「う……うん」


な……なに?

すごいドキドキしてる……あたし。

しっかりしなさいよ!

これは取材なんだから!

あくまでもキスシーンの取材なんだから……。


「うん。良かった良かった。できるみたいだね、キス。はははっ……」


あたしは意味もなく笑った。

口からでた言葉は動揺しすぎて、まるで棒読みみたいだった。


一方、蓮君の方は顔色一つ変えずに

「ああ。軽いキスならね」

なんてさらりと言ってのける。


「ええ?」
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