ケータイ恋愛小説家
腕を伸ばしてあたしの手首を掴んで、体を引き寄せた。

どちらがどう動いたのかわからないけど、とにかくあたしは蓮君の開いた両足の間にすっぽり納まってしまった。

と同時に、もう片方の手があたしの背中にまわされてさらに引き寄せられる。

それは強引にでもなく、かといって遠慮がちでもない、優しく自然な抱き寄せ方で、あたしは体を蓮君に預けることに何のためらいも感じなかった。

蓮君の甘い香りがあたしを包み込んだかと思ったら、ゆっくりとその顔が近づいてきた。


「れ……蓮君?」


「しっ……。黙って」


その低い声だけで、何も抵抗できなくなる。

な……なに?

なんなの?

また鼓動が高まる……。

ドクンドクンと脈打つ心臓の音が彼に聞こえるんじゃないか……なんて、ヘンな心配してしまう。

もうどうにかなってしまいそうなぐらいだよぉ。


体はカチコチに固まってまったく動けない。

なのに、彼に抱きしめられた背中のあたりから、じわじわと体が熱を帯びて、そこからぐにゃぐにゃと溶けていきそうな錯覚すら起こす。

あたしきっと今耳まで真っ赤だ……。


蓮君の唇が何かを言いかけるかのように、ほんの少し開く。

伏し目がちな彼の表情がやけに悩ましげで見とれちゃう。

彼の口から漏れる息があたしの唇にあたって……


それが合図のように、なぜかあたしは自然に目を閉じてしまっていた。


そして……







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