ケータイ恋愛小説家
「……日向? おーい。起きてる?」


「ほえ?」


気付くと、あたしの顔の前でお弁当のおかずのウインナーを箸に挟んで振っている綾乃がいた。


「え?今あたし寝てた?」


「うん。目つぶってたし。ほらっご飯つぶ、落としてるよ」


「へ? うわぁ」


昨夜ほとんど寝ていなかったせいで、昼休みの食事中に強烈な睡魔に襲われたあたしは、ご飯を口に入れ損なって眠っていたらしい。

スカートの上には、一口大に固まったご飯つぶが落ちていた。


「もー。しっかりしなよー?」


綾乃は呆れ顔をあたしに向ける。


「ひーん」


なんてベソかきながら、スカートの上のご飯つぶを拾い集めるあたし。


「ところで、次数学だよ? 大丈夫なの?」


「あ! それならバッチリ!」


心配する綾乃にニカッて満面の笑みを浮かべるあたし。


「大輔君に教えてもらったんだ」


「大輔って……例のあごひげ?」


綾乃は眉間に皺を寄せて、怪訝そうな顔をする。
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