ケータイ恋愛小説家
――ピンポーン


あたしは蓮君の部屋のチャイムを鳴らす。

だけどいつまで経っても蓮君は出てこない。

約束の時間は午後1時。


いくらなんでもこんな時間まで眠ってるってことないよねぇ。

まさか忘れてて、どこかへ出かけちゃったのかなぁ。


何度かチャイムを鳴らし、もういい加減諦めて携帯から電話してみようと思ったその時。



「ふあああい」

なんて声がして、ゆっくりとドアが開いた。

蓮君が今まで眠っていたのだということは容易に想像できた。

いつもよりトーンが低くハスキーな声。

髪はボサボサで目をこすりながら蓮君は顔を覗かせた。

だけどあたしと目が合うなり、その表情が変わった。


「あれ? 日向? うわっ。やべ……寝過ごした」


一方のあたしはと言えば、さっきから一言も言葉が出せずに、ただ硬直していた。


だって……。

だって……。


蓮君、上半身裸なんだもん。
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