ケータイ恋愛小説家
「すぐ用意すっから、中、入って待ってて」


そう促されたあたしは、おずおずとドアの中に入って、玄関で待たせてもらうことにした。

蓮君はドタバタと慌てて用意しだした。

服を出して床に投げ出し、そして自分のスウェットを脱ごうとしてズボンに手を掛ける。

あたしは思わず慌てて蓮君から背を向けた。


きゃああああ。

生着替えっすかああああ。


だめだ……。

またドキドキしてる。

だって、蓮君の体……。

すごくキレイだったんだもん。

男の人の体を見て、キレイって表現はおかしいかもしれないけど、ほんとにそう思った。

蓮君は子供の頃から水泳をやっていたからか、すごくバランスのとれた体型をしている。

細く見えるのに、実際にはほどよく筋肉がついていて、肩幅も広い。


ん?


ちょっと待てよ?

これって、男の人の裸を見る絶好のチャンスなんじゃないの?

これだって、小説の役に立つよね。


そうよ!

これは取材!

取材なの!

別にあたしにヘンな下心があるわけじゃないんだから。


なんて誰に言い訳してるでもなく、あたしはそーっと振り返った。
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