ケータイ恋愛小説家
食べて欲しいの
結局あたしの足の怪我はたいしたことはなく、3日もすればすっかり痛みもひいていた。
あたしは今、学校帰りに蓮君の家に向かっている。
あの日に出してもらったタクシー代を返すようにと、お母さんからお金を持たされたからだ。
あらかじめ連絡を入れれば、きっと蓮君のことだから、「返さなくていい」と断るだろと思ったあたしは、いきなり彼の家を訪ねることにした。
だけどちょっと足取りが重い。
あたしなんかが届けるよりも、美雨ちゃんが届けた方が蓮君は喜ぶんだろうなぁ……。
なんて、そんな卑屈なことばかり考えてる自分がつくづく嫌になる。
蓮君の住むマンションの傍まで来ると、見覚えのあるバイクがエンジン音を立てて、今まさに動き出そうとしていた。
あのオレンジのバイク――HONDAのズーマー――って、たしか、蓮君のバイクだ。
「蓮く――ん!」
あたしは足の怪我のことなんてすっかり忘れて、慌てて駆け寄った。
「れ? 日向? お前、足大丈夫なの?」
「あ、うん。大丈夫。あの……この間はありがとう。それで……」
タクシー代のお金を払おうと鞄の中を探りながらもたもたしているあたしの言葉を蓮君が遮った。
「日向、悪いっ。今からバイトのピンチヒッターなんだ。1時間ぐらいで終わるから、部屋上がって待ってて」
「え?」
いや……待つほどの用事じゃないっていうか、お金払ったらすぐに帰るつもりだったんだけど……。
なんて言葉をあたしが発するより前に、蓮君はポケットから部屋の鍵を出すとあたしの手に握らせた。
そしてよっぽど急いでいたのか、あっという間にバイクで去って行ってしまった。
あたしは今、学校帰りに蓮君の家に向かっている。
あの日に出してもらったタクシー代を返すようにと、お母さんからお金を持たされたからだ。
あらかじめ連絡を入れれば、きっと蓮君のことだから、「返さなくていい」と断るだろと思ったあたしは、いきなり彼の家を訪ねることにした。
だけどちょっと足取りが重い。
あたしなんかが届けるよりも、美雨ちゃんが届けた方が蓮君は喜ぶんだろうなぁ……。
なんて、そんな卑屈なことばかり考えてる自分がつくづく嫌になる。
蓮君の住むマンションの傍まで来ると、見覚えのあるバイクがエンジン音を立てて、今まさに動き出そうとしていた。
あのオレンジのバイク――HONDAのズーマー――って、たしか、蓮君のバイクだ。
「蓮く――ん!」
あたしは足の怪我のことなんてすっかり忘れて、慌てて駆け寄った。
「れ? 日向? お前、足大丈夫なの?」
「あ、うん。大丈夫。あの……この間はありがとう。それで……」
タクシー代のお金を払おうと鞄の中を探りながらもたもたしているあたしの言葉を蓮君が遮った。
「日向、悪いっ。今からバイトのピンチヒッターなんだ。1時間ぐらいで終わるから、部屋上がって待ってて」
「え?」
いや……待つほどの用事じゃないっていうか、お金払ったらすぐに帰るつもりだったんだけど……。
なんて言葉をあたしが発するより前に、蓮君はポケットから部屋の鍵を出すとあたしの手に握らせた。
そしてよっぽど急いでいたのか、あっという間にバイクで去って行ってしまった。