『叶えたいこと』
諦めるが勝ち

たとえばあの鳥みたいに

 
 たとえばあの、飛んでいる鳥みたいに。
 
 空を飛びたい、なんて。夢を見ていたのは、一体いつの頃までだっただろう。
 夢なんか見ていたって、しょうがないって。

 なんだかもやのかかったような毎日に満足するようになったのは、何時からだったろう…。

 「やめたほうが、いいよ?」
 「?」

 それはある日のこと。
 あまり人のいない屋上で授業をさぼっていたあたしは、人が居ることにも気がつかず、フェンスぎりぎりに身を乗り出していた。
 
 「痛いよ、たぶん」
 「え?」
 
 言われてることの意味がわからない。少年は、真剣なまなざしであたしを見つめてる。
 
 「だからさ、自殺なんて…」
 「は?自殺?」

 ああ、そうか。フェンスを乗り越えて飛び降りるとでも思ったのか。

 「あれ?違ったの」
 「違うわよ。こんなとこで自殺したりしないわよ」
 「そっかぁ、ごめん」
 「別に」

 それだけ言ってあたしは屋上を後にする。
 男の子はきまり悪そうに何かを言いかけていた。
 それにしても、あの男の子見たことない顔だな。
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