『叶えたいこと』
教室。
「あいつ、またサボってたよね」
「どうせ、頭いいから授業なんか出なくてもいいんじゃないの?友子さまさま!は」
教室に戻ると、いつものようにひそひそと話す声が聞こえる。
文句が言いたいなら、直接言うか聞こえないようにするか、どっちかにしたらいいのに。何時ものことだと、あたしは気にも留めない。
「あ、君塚これ」
さっさと帰っちゃおうと荷物を詰めていると、武田君がプリントをくれた。
「さっきの授業のプリント」
「あ、ありがとう」
「ノート、いるか?」
と、自分のノートを差し出してくれる。
「あ、いや、いいよ」
「そか。あんま、授業サボるなよ」
「うん…」
「じゃあな」
武田君は前に隣の席だった。
あの頃はよく、教科書を見せてあげたり、時には宿題を教えてあげたりしていた。
あたしがこのクラスに馴染めないことに気がつくと、なんとなく気にしてくれているらしくこうやって時々声を掛けてくれる。
中学の頃には進学校に通っていたが、身体が弱く休みがちで、ほとんどの友達が行った高校には行くことができなかった。
そういう訳でこの高校にやって来たんだけど、まわりの皆はもうグループが出来ていて気がつけばクラスで一人になっていた。
結局、この学校でも休みがちなあたしは友達も出来ないまま今日に至っている。
加えて進学校出のあたしは、授業の出席日数も少ないくせにテストの点がよかったりするので余計にクラス内の風当たりが悪い。