『叶えたいこと』

屋上の、君。

 「今日は夕日が綺麗だわ」

 なんて独り言をつぶやきながら、帰宅部のあたしはなんとなく屋上に向かった。

 「あ」
 「あ、やぁ!」
 
 さっきの男の子だ。嬉しそうにあたしに手を振る。

 「さっきは悪かったね」
 「まぁ、あんなとこであんな風にしてたら間違われてもしかたないわよね。だから、あたしも、悪い」
 「悲しそうな顔、してたからね」
 「そう…かもしれないわね」
 「悲しいこと、あった?」
 「まぁね」
 「そか。ね、ココから見る夕日、綺麗だよね」
 「そうね。あ…そういえばあなた、どこのクラス?」
 「え?あ、ぼ、僕?」

 急に焦る男の子。どうしたのかしら。
 
 「いや、あんまみたことない顔だなって思って」
 「あ、あぁ。僕は、F組」
 「Fか。それじゃ見たことないわね」
 「うん。人一杯だからね、この学校」

 この学校はA~H組まである。同じ学年に見たことのない顔はいくらでもいる。
 A組のあたしと、F組の彼とではなおさらだ。

 「よくここ、来るの?」

 あたしの質問に、彼は複雑な笑みを浮かべて「うん」と言った。
 それからあたし達は、夕日が落ちた頃屋上を後にした。
 だけど彼は笑顔であたしを見送った。
 あんな時間まで、学校で何をしてるんだろう?
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