『叶えたいこと』
綺麗な音色
その日の放課後。
屋上へ向かう廊下で、とっても綺麗なピアノの音が響いてきた。
なんとなく気になって、引き寄せられるようにそちらへ足を運んだ。音楽室の前までくると、中から音が聞こえてきた。
ドアを少しだけ開けてそっと覗く。
「あ…」
思わず声を上げていた。
「あ、君塚」
声とともにピアノが止む。弾いていたのは武田君だった。照れくさそうに笑う。
「すごい、ピアノ弾けるんだ」
「恥ずかしいところ見られちまったな」
「いや、すごかったよ、すごい綺麗な音色だった」
「そうか?小さい頃習ってて、今もちょっと暇な時練習とかしてんだ」
武田君からは、どちらかというとピアノを弾くというイメージは浮かんでこない。武田君があんなに素敵な音を出せることにあたしはただただ驚いていた。
「武田君、ちょっと弾いてよ」
「え?恥ずかしいよ」
「いいじゃない、もう見ちゃったし。それにピアノが弾けるだなんて、すっごいかっこいいよ」
「そうか?よし、なんかリクエストある?」
恥ずかしいと言っていたわりに、いざ弾くとなると乗り気な武田君がちょっとかわいく見えた。
「えっと、リストの『ため息』とかって弾ける?」
「『ため息』か」
言うと鍵盤に手を置いた。
指がしなやかに動き出したかと思うとピアノからはまた綺麗な音色が響きだす。
あたしが好きな『ため息』が、教室中を渦になってあたしたちを包んでる、そんな感じの演奏だった。
それから武田君は何曲も弾いてくれて、気がつくと日が傾いていた。あたしたちは慌てて学校を後にした。
屋上へ向かう廊下で、とっても綺麗なピアノの音が響いてきた。
なんとなく気になって、引き寄せられるようにそちらへ足を運んだ。音楽室の前までくると、中から音が聞こえてきた。
ドアを少しだけ開けてそっと覗く。
「あ…」
思わず声を上げていた。
「あ、君塚」
声とともにピアノが止む。弾いていたのは武田君だった。照れくさそうに笑う。
「すごい、ピアノ弾けるんだ」
「恥ずかしいところ見られちまったな」
「いや、すごかったよ、すごい綺麗な音色だった」
「そうか?小さい頃習ってて、今もちょっと暇な時練習とかしてんだ」
武田君からは、どちらかというとピアノを弾くというイメージは浮かんでこない。武田君があんなに素敵な音を出せることにあたしはただただ驚いていた。
「武田君、ちょっと弾いてよ」
「え?恥ずかしいよ」
「いいじゃない、もう見ちゃったし。それにピアノが弾けるだなんて、すっごいかっこいいよ」
「そうか?よし、なんかリクエストある?」
恥ずかしいと言っていたわりに、いざ弾くとなると乗り気な武田君がちょっとかわいく見えた。
「えっと、リストの『ため息』とかって弾ける?」
「『ため息』か」
言うと鍵盤に手を置いた。
指がしなやかに動き出したかと思うとピアノからはまた綺麗な音色が響きだす。
あたしが好きな『ため息』が、教室中を渦になってあたしたちを包んでる、そんな感じの演奏だった。
それから武田君は何曲も弾いてくれて、気がつくと日が傾いていた。あたしたちは慌てて学校を後にした。