WHITE LOVE
「そっかぁ。いいな」
「杏奈は…中里君と共通点とかあったっけ?」
「中里君とは…家が近くてね。帰りがよく一緒になってたの」
杏奈は嬉しそうに話始める。私はなるべく笑顔を崩さないように相槌を打つ。
「ゆずとバイバイしたあといつも家の近くの公園で中里君の姿見かけてて、子供にサッカー教えてあげてたり本読んでたり。ある時ね、ちょうど公園から出てきた彼と一緒になって、私から話かけたんだ。同じ高校ですよね、って」
私は声を出すことが困難になっていた。そして、次の言葉を静かに待った。
「それで、彼と話すようになって。本当に家が近いの、うちから歩いて五分もしないところ」
杏奈と私の分かれ道となる土手に差し掛かり、立ち止まる。
「で、話しているうちに好きになったってわけ」
私は慌てて声を出した。
「そうだったんだね。なんか運命的じゃん!」
「ありがとう」
杏奈は嬉しそうに俯く。長いまつ毛が美しく動いた。
「応援するからさ、頑張ってね!」
「ありがとう。また報告するね」
「待ってるよ!じゃあ、また来週だね」
「うん。バイバイ」
「バイバイ」
大きく手を振り、私達はそれぞれ歩き出した。胸が苦しくて、めまいがしそうだった。
応援するなんてなんで言っちゃったんだろう。
バカみたい。
でも、杏奈の嬉しそうな顔を見て、私も好きだなんていえるはずもなかった。


杏奈は運命的な出会いをしていた。
私が大好きだと初めて感じたあの人と。
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