あくあまリング
「翔司ッて、好きなコいるのかなぁ?」


アタシと同じバスケ部員のカナコが、呟くように、でも、ハッキリと解答を求めるような口調でアタシに聞いてきた。



放課後、部活も終わり、アタシを含め 1年=パシリ の同級生らは床のモップ掛けやボールを片付ける為、独特のツンとした鼻につく臭いのする体育倉庫に来ていた。


「ん~…どうだろ?」


一瞬、バレてる!?ッて思ったけど、どうやらカナコは翔司が気になるらしく、いつも一緒にいるアタシならわかると思い聞いてきたみたいだった。


「誰かいるのかなぁ?でも、いつもいろんな女子と喋ってるよね。」


うんうん。確かに。
アタシも付き合うようになってから、それはすごぉ~く気になってきてるよ。

男女限らずみんな仲が良いし、もちろんアタシだって男子とじゃれたりもするからお互い様なんだけど…。


「どう…だろうね。」

「たかちゃんも知らないんだ~。じゃあ、誕生日ッてわかる?」


正直、教えたくないなッて思った。

同級生ならみんな小学校の卒業アルバムを見ればわかるんだけど、カナコは中学に入学する時に引っ越してきた。

わからない、と答えるのも不自然な気がして、蚊の鳴くような声で呟いた。


「…12月だよ。。」

「2月なんだ!」


聞き間違いをしたカナコに、アタシは訂正しなかった。

カナコが他の誰かに聞いたらすぐにバレちゃうのに。


いつの間にかアタシは、独占欲が強くなってきていた。
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