あくあまリング
リビングのテーブルの上には、少し前まで父が読んでいたであろう朝刊だけが、配られた時と同じように綺麗にたたまれて置いてあった。

アタシはその朝刊を反対側の端に置き直して、その空いた場所に麦茶とバナナを置いた。

リビングでドライヤーをする時、コンセントに届く場所に座ろうとすると、そこが一番都合がいい。

ドライヤーをコンセントに差し、‘都合がいいその場所’にあるソファの足元に座った。

麦茶を一口飲み、ドライヤーをオンにしようとした時、鏡を忘れた事に気付いた。

「あぁ~、めんどくさッ。」

重い腰を上げ、また洗面所へ向かいスタンドミラーを持って来た。
< 5 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop