リボンの指輪
その瞬間、あたしの中で、何かが音を立てて切れた。




「ふざけないでよ…」




あたしの低い声に、頼は驚いたように、あたしを見る。




自分の低い声に驚いたのは、他の誰よりあたしだったと思う。




あたしって、こんなに低い声出るんだ。




「それはこっちのセリフだから!誰でもいいくせに、近寄って来ないでよ!混乱させないで!!」




ぽろぽろと、涙が溢れて来る。




「あたしは、好きな人としか、キスなんてしたくない!あたしは、頼とは違う!!もう、違うんだよ……?」




いつもいつも、あたしの人生、頼のせいで、ぐちゃぐちゃだ。




いつも、頼といると、真っ直ぐな道を、進めない。




「もうやめてよ……っ」




膝から抜けて、しゃがみこむ。




いつも、思い描いた場所には、立てない。
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