リボンの指輪
「送る?」




優希くんが、暗くなってきた空を見つめて、そう言う。




「ううん、大丈夫。それに、うちの前って、意外と声聞こえるし、窓覗くと、見えるんだ」




これ、あたしの経験論。




ちらっと窓の外を見ると、覗きたくなくても、見たくなくても、見てしまうんだ。




下を。




「そっか。じゃ、近くの公園まで」




「あ、ありがとう」




今思えば、こうして2人で街を歩くのも、結構久しぶりな気がする。




今はもう、やっぱり前みたいな感情は、どこにもなかった。




2人で歩くのが嬉しいとか、ずっと続けばいいのに、とか。




「それにしても、陽菜って、大分田村のこと好きだよな」




優希くんまでも、香織みたいなことを言う。
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