雪の日の約束《短編》
僕は走って傘を取り戻してくると、ユキナに差し出した。


「ほら。ちゃんと持ってろよ」


「うん。ありがと」


傘を渡す時にユキナの冷たい手が触れて、一瞬ドキリとした。



「それにしても、なんでこんな傘持ってるの?赤い傘なんて小学生かと思ったよ。…っていうか、これ子供用の傘じゃない?」


「…いいでしょ、別に。」


ユキナは少しの間をあけてから、そう答えた。


その顔はちょっとだけ…怒っているようにも見えた。


そんなユキナを見ながら、僕はさっき感じた胸のつっかえが、またゴソゴソ動くのを感じていた。



「お前…頭に雪が積もってる」


ユキナの頭から雪を払い落とすと、ユキナはクスクスと笑った。


「お前…だって。子供の時はユキナちゃんって呼んでたくせに。急に大人ぶっちゃって」


「うっうるさいよ!大人ぶってるんじゃなくて、大人なんだよ!」


「はいはい。セイちゃんが私をお前って呼ぶようになったのって、いつからだったかな」


ユキナは傘をクルクル回しながら、ぽつりと呟いた。

< 11 / 23 >

この作品をシェア

pagetop