雪の日の約束《短編》
「そろそろ…戻ろうかな」


そう言ったユキナの顔は、なんだかとても寂しそうに見えた。


「もう暗いし、送っていくよ」



僕達はユキナが泊まるというSホテルに向かって歩きだした。


結局ユキナは何をしに来たんだろう。


偶然僕に会って、少しだけ話をして、そして戻ると言う。



僕とユキナは手を繋ぐでもなく、離れるでもなく、微妙な距離を保っていた。


まるで高校時代に戻ったようだ。




「私ね、セイちゃんに会いにきたんだよ」




その言葉に驚いて隣を見たけど、ユキナの表情は傘に隠れて見えなかった。


「僕に?なんで?」


「言ったでしょう。懐かしくなったって」


ユキナが上を見上げたので、僕もつられて空を見た。


黒い幕を張ったような空から、しんしんと雪は降り続いていた。

< 12 / 23 >

この作品をシェア

pagetop