雪の日の約束《短編》
僕に会いに来た…。


どうして今になって?


本当は僕もユキナに会いたかった。


会いに行こうとしたこともある。


だけど結局…駅のホームに並ぶベンチに座ったまま、電車を何本も見送った。


それは怖かったから。


ユキナとの思い出がキレイすぎて…。


それを壊すのが怖かったから。


僕がユキナを一人の女として見ていることを知られるのが怖かったんだ。


自分自身、それに気付いたのは、ユキナがいなくなると知ってからだけど。



僕はカラカラになった喉から声を出した。


「ねぇ、お前…何か…あったの?」


「あったと言えば、あったかな。大人になれば、いろいろあるものだよ」


「う…ん、まぁ…な」



そう言ったきり、僕達は口を開くことはなく、一歩足を出す度に白い息を追い越した。

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