雪の日の約束《短編》
ホテルに着くと、ユキナは傘をくるりと巻いてパチンと留めた。


「セイちゃんに会えた記念に、これあげる」


「傘?子供用の、しかも赤い傘なんて、いったい僕にどうしろと言うんだよ」


「まあ、いいからいいから。この傘を私だと思って大事にしなさい」


「わけわかんないよ。でもいいさ。もらっとく」


僕は、ユキナの手から小さな赤い傘を受け取った。




「セイちゃん、やっぱり私、明日帰ることにする。」


「…そっか」



次はいつ来る?


また…会える?



肝心な事を聞けない僕は、五年前から成長していないのかもしれない。



「今日はセイちゃんに会えて、嬉しかったよ」


ユキナは僕と向き合うと、ニッコリと笑った。

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