雪の日の約束《短編》
帰り道、僕は一人歩いた。


さっきつけた足跡はほとんど消えかかり、浅い楕円型の凹みになっていた。


もちろん、頭の中はユキナの事でいっぱいで、家に着いても中に入る気になれず、庭に回った。


ユキナにもらった傘を開く。


パサ…パサ…。


小さな音をたてて、傘の上に雪が積もってくる。


その音は、この庭でユキナと遊んだ思い出を甦らせると同時に、僕の胸に小さな後悔の気持ちを徐々に積もらせていった。



がらりとサッシが開いて、母親が顔を覗かせた。


「セイ?なんだ、帰ってたの?いつまでもそんな所で…風邪ひくわよ?」


「あぁ、うん」


「うふふ、懐かしいわね。その傘」


「えっ?この傘が懐かしいの?」


「ええ、そう。ほら、ユキナちゃんが子供の頃のお気に入り」


「ユキナの…」


「あなた達、よくここで遊んでたじゃない。暗くなるまで」



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