雪の日の約束《短編》
そうだったなぁ…。


そういえば、雨が降ったり雪が降ったり、下手したら晴れた日でも、ユキナはお気に入りの赤い傘をいつも持ってた。


僕は、そんな事忘れてた。


当たり前すぎて忘れてた。


いつも暗くなるまで遊んでて…今の季節なら、雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり。


暗くなって、家に明かりが灯るまで遊んで、心配したおばさんがユキナを迎えにきて…。


迎えにきて…………。



僕は傘を閉じると、後ろ向きのまま言った。


「さっきユキナに会ったんだ」


「本当?懐かしいわー。ユキナちゃん、キレイになったでしょうね」


「…母さん…。ごめん!ちょっと行ってくる!」


「えっ…ちょっと!セイ!?」


母さんが呼んだ時にはもう、僕は家の門から飛び出していた。


赤い傘を左手に握りしめたまま、雪に足を取られながらも、全速力で走った。

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