雪の日の約束《短編》
何だ…?

人間か?


僕は自分で思って苦笑した。


ここは別に山の中でもなんでもない。


ただのありふれた住宅街だ。


今日はたまたま雪が多くて、みんな家に閉じこもっているだけなのだ。


だけど…こんなに誰ともすれ違わなければ、少しは寂しくなってくる。


だから僕は、遠くに人間らしき姿を見てホッとしたのだった。



ゆっくりとではあるが、その赤い物と僕の距離は縮まってきていた。


目を細めて見ると、それは赤い傘をさした人間であることが確認できた。


「赤い傘…小学生か…」


僕の呟きが聞こえるわけはなかったが、向こうが顔を上げてこっちを見たのがわかった。
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