雪の日の約束《短編》
僕はユキナの手をぐいっと引いて傘を握らせると、話し始めた。


「だって、お前さ、子供の頃いつも赤い傘さしてただろう?大事そうにしてさ」




今日のように雪が降り積もる日、僕達はいつものように遊んでた。


夕方になって、おばさんが迎えに来ると、ユキナは雪の上に開いた傘を置いて、その陰に隠れたんだ。


丸見えなのに、必死で隠れて。


やっぱりすぐに見つかっちゃって、ユキナは『まだ帰りたくないよぅ、セイちゃんと一緒にいたいよぅ』って泣いたんだ。




ユキナは僕の話を俯いて聞いていた。


「そう。そして…セイちゃんが何て言ったか、覚えてる?」


ユキナは顔を上げると、少し赤くなった目で僕を見つめた。

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