雪の日の約束《短編》
「…で?どうしたの急に?この街に用事でもあった?」


「う…ん。ちょっとね。懐かしくなっちゃって」


「ふぅ、ん…」


ユキナがそのまま黙ってしまったので、僕はそれ以上聞くのをやめた。



「懐かしくなっちゃって」か…。


こんなに寒い、しかも雪に埋もれそうな時に、わざわざ来る奴がいるか。



何か…あったのかな…?



僕は、子供の時から背の小さい、ユキナのツムジをじっと見つめた。


なんとなく、ユキナのまつげが濡れているような気がしたけど、それは雪のせいかも…知れない。



「セイちゃんは、相変わらず背が高いね」


ユキナは懲りずに僕を「セイちゃん」と呼んで、背伸びをすると傘の中に僕を入れ、はにかむように笑った。

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