雪の日の約束《短編》
「セイちゃんの家に泊めてくれる?」


「えぇっ!?」


僕の家には両親も兄弟もいるから、間違いが起こることはないのだけれど。


だけど、ちょっとした期待があるのも事実だった。


だって…。


僕はユキナに会った時、戸惑いと同時に胸が高鳴るのを感じていたのだから。


僕は、胸のドキドキを隠すように、コートの前の雪を勢いよく払った。


「お、お前なぁ。そんな簡単に男の家に泊まるなんて言うなよ!」


するとユキナはプッと吹き出すと言った。


「冗談!ちゃんと駅の近くのSホテルに予約取ってあるから大丈夫」


「それなら…いいけどさ」


横目でちらりと見ると、斜め下にユキナの白い額が見えた。


一緒に笑ってたあの頃は、ユキナの肌の色がこんなに白いことにも気付かなかったのに。


今の僕は、ユキナの目にどう映っているんだろう。


一人の男として…ちょっとくらい意識してもいいのにさ。

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