上手なフラれ方
鬼の呪い
「またか」


本日30通目のメールに、僕は顔をしかめた。


大学のテニスコートだった。

ようやく練習が終わり、コートの隅で携帯を開いている。

こんな年末に練習をしているサークルは、僕たちくらいのものだった。

明日は大晦日だというのに、みっちりと3時間、練習をこなしていた。

夕方の空はすでに暗くなっていて後半はほとんどボールが見えない状態での練習だった。


「よーし、飲みに行くぞ」と威勢よく喚いている先輩たちは無視して、もう一度届いたばかりのメールを読んだ。

彼女からのメールだった。


『おつかれさま〜♪会いたいよ〜
そろそろ練習終わったかな??

あたしは今終わったよ☆でも、一年生は雑用もやらなきゃだから、まだ帰れないんだ(>_<)

今日もコウちゃんに会えなくてさみしいよお(T_T)
もう一週間も会ってないよ!!
早くコウちゃんに会いたい!!次はいつ会えるかなあ??』


メールだと可愛いのにな、と僕はあらためて思った。

実際の彼女は、メールとはまったくの別人だった。
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