上手なフラれ方
それは完全なる一目惚れだった。

のちにわかったことだが、昨年一年生だった北村麗華は、文化祭でミスキャンパスに選ばれていたらしい。

長い髪と、スラッとした目が特徴的な女性だった。


ブースに座ると男性が熱心にサークルの説明をしてくれてたが、僕はひとつも聞いていなかった。

ただひたすら、北村麗華の顔を見つめていた。

おそらくはたいていの一年生が同じ反応をするのだろう。

男性は気をひこうと必死に話をしていたが、途中であきらめたようだった。

そこから男性の口調が、淡々とした事務的なものに変わった。


ようやく説明が終わったとき、彼女が僕に「ぜひこのサークルに入ってくださいね」と言った。

僕は迷うことなく「はい、もちろん入ります。アナタノコトガ、チュキダカラー」と即答したかったが、理沙にばれたらミンチにされると思い、「はい」と返事をするにとどまった。


そのとき少しだけ、理沙に対する罪悪感を感じたけど、必死に掻き消した。
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