上手なフラれ方
「こ、殺される!!」


またしても叫んでしまった。

前に座っていた乗客が、なぜか席を離れたので、そこに腰掛ける。


今の作戦はダメだった。

能面の理沙は、アクセルしかない車より危険だ。


しかたなく、別の作戦をシミュレーションしてみることにする。

二つ目の作戦は、浮気だ。

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「理沙様、実は僕、好きな人が出来たんだ」

「へえ。それで?」

「実はその人と今付き合ってるんだ」

「へえ。名前は?」

「大野康介だけど」

「とぼけたこと言ってると殺すよ? あんたの名前じゃなくて、女の名前を聞いてんの」

「北村麗華だけど」

「あいつか。ねえ、前から言ってたよね? 浮気したら殺すって」

彼女がどこからか釘バットを取り出す。

そして彼女は、「ウフフフフフ」と釘バットを振りかぶった。

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