上手なフラれ方
「空手部のマネージャーになってくれるよね?」

彼女、上田理沙にそう命令されたのは高校一年の春だった。

休み時間、教室で本を読んでいた僕の襟首を掴み、持ち上げながらのセリフだった。

彼女いわく、「空手部にはマネージャーがいないんだよね。あんたしかいないでしょ」とのことだった。


僕が指名された理由は、僕が格闘技観戦が好きだということを、彼女が知っていたからだろう。

理沙とは偶然だが小学校、中学校、高校と同じ学校に通っていた。

そう、つまり僕は呪われているのだ。

理沙とは、かつてよく格闘技の話をしていたから、彼女がそれを知っているのは当然だった。


空手部のマネージャーをやることは、それほど嫌じゃなかったから僕は堂々と返事をした。

「ははは、はいっ! ももも、もちろんやらせていただきます!」

理沙は満足気に頷き、僕を椅子に叩き戻してくれた。

学校の椅子と周りの生徒が悲鳴を上げていた。
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