上手なフラれ方
理沙の右ストレート、通称「デストレート」が顔面にクリティカルヒットした。

僕は盛大に鼻血を流しながら床に倒れ込んだ。

歓声が湧いた。

禿田鶴男が開始数秒でKOされたようだった。


「さっさと座りなよ。次の試合が始まるでしょ」

理沙が何事もなかったかのように言い放った。

僕は手で血を拭いながらよろよろと立ち上がり、席に座った。


「しっかし、禿田はやっぱり弱かったね。まるであんたみたい。あんなやつ、さっさと引退しちゃえばいいのに」

「……僕は禿田鶴男、けっこう好きだけどな」

思わずつぶやいてしまった。

理沙の顔付きが変わった。
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