上手なフラれ方
「あんた、どういうつもり?」

僕は今だかつて、これほど恐ろしい理沙を見たことがなかった。

「あんな弱いやつが好きなのか」

「いや、その……」

殴られる、と思い顔を背けた。

だけど、彼女の右手は動いていなかった。


「意見の相違だ」


理沙が立ち上がりながら言った。

顔から恐ろしさが消えている。

また新たな歓声が湧いていたが、僕の耳にはほとんど入ってこなかった。

理沙の声だけが、はっきりと聞こえてきた。


悲しげな、声だった。





「別れよう」
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