上手なフラれ方
ようやく階段を昇り終えると、すぐ先に北村麗華が立っていた。

彼女は僕の存在に気付いたのか、こちらを見て優しく微笑んだ。

他にも多くの人がいたが、僕には彼女しか見えなかった。

古い告白のようだが、事実、そうだった。

可憐という言葉がこれほど似合う女性を、僕は今までに見たことがなかった。


「可憐」と「鬼」。


なぜこの二人を比べているのだろうと、自分自身、不思議だった。




「遅いですよ、大野さん」

「ごめんなさい」

謝りながら、また理沙のことを考えてしまう。

心の中で、もう一度、ごめんとつぶやいた。
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