上手なフラれ方
「でも、どうしたんですか? 突然、会えないか、なんて」

と北村麗華が言った。

「君のその笑顔を見ないと、年を越せる気がしなくて」とでも言いたかったが、「いや、あの……」と言葉に詰まってしまう。


北村麗華は僕の気持ちをさっしたのか、「とりあえず行きましょうか」と神社の境内の方に向かって歩き出した。

境内へ向かう人の流れに乗りながら、北村麗華はそっと僕のコートの袖を掴んだ。


ドクン。


心臓が、大きく、揺れた。

思わず、手を引いてしまう。

「あっ、ごめんなさい。彼女に悪いよね」

僕はなにも言えなかった。

どうして鼓動が大きくなったのかも、どうして手を引いてしまったのかも、わからなかった。

気持ちの整理ができない。

頭の中で、様々な感情がグルグル回る。

それでも言うべきことがあった。

その言葉を言うために、今、この場所に立っている。


「北村先輩」

僕は立ち止まった。

地面の砂利が軽い音をたてる。

「話したいことがあるんです」
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