上手なフラれ方
「なんでそんなうそつくの?」

理沙の声は怒っているようにも、戸惑っているようにも聞こえた。

「いつも殴ったり蹴ったり怒鳴ったり。そんな人、好きになるはずないもん」

「だよね」


うん、まったく、その通り。

僕の好みは、おとなしくて、優しくて、暴力を振るわない人。

理沙とはまるっきり逆の人。

そのはずだった。

それなのに、なんでだろう。


「だけど、なんでかわかんないけど、好きなんだよね」


言葉に出してみて、自分で頷く。

うん、この言葉が一番しっくりくる。

自分でも不思議。

理由もないのに、好きなんだ。


「意味わかんないよ」


理沙がくすくすと笑う。


「まったくだね。同感」


肩を並べて笑った。

雷はいつの間にか遠ざかり、雨も止んでいた。

高校一年の、夏。

はじめての、恋だった。
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