上手なフラれ方
コウちゃんとあたしは、対等じゃなかった。

別れてから一ヶ月たった今、あらためて思う。

あたしはくるりと振り返って「遅い!」と一喝した。

うしろから、両手に大量の荷物を持ったコウちゃんがよろめきながら近づいてくる。


あたしたちは今、正確には付き合ってない。

あの日、「もう一度やり直せないかな」って言われたけど「しかたない、見習いからね」って返事した。

だから、コウちゃんは彼氏じゃなくて、ただの見習い。

あたしも素直じゃないよね。

コウちゃんのこと大好きなのに、いざ目の前に立つと、暴力を振るったり、思ってもいないことを言ったりしちゃう。

コウちゃんは優しいから許してくれるけど、やっぱりあたしがこんな態度ばっかりとるから、別れることになっちゃったんだよね。

だからあたしは、変わろうと決めたの。

今日だって、いつも男の子みたいな服ばっかりじゃコウちゃんも嫌かなって思って、女の子らしい服を買いにきたんだから。

「理沙、歩くの速いよ」

ようやく追い付いたコウちゃんは息が乱れてる。
< 38 / 39 >

この作品をシェア

pagetop