上手なフラれ方
僕は過去に一度だけ、理沙に反抗したことがある。

大学に入ってすぐのことだった。

僕は理沙の「もちろん同じとこに行くよね?」という鶴の一声で、同じ大学に進むことになった。

理沙は大学に入る前から空手部に入ることを決めていた。

そもそも、彼女は空手での推薦入学をつかみ取っていたから、それは当然のことだった。


入学式当日、帰り際に理沙は「マネージャーになってくれるよね」と命令してきた。

だけど僕はその命令を拒否した。


僕にはどうしても入りたいサークルがあった。

それが今所属しているテニスサークルだった。


「テニスサークルに入りたい」と伝えても、理沙は力付くで僕をマネージャーにしようとしていたがやがてあきらめた。

そのとき彼女は「浮気したらおまえを殺して理沙も死ぬ」と言っていたが、どの程度本気なのかはわからなかった。

それが、唯一の反抗だった
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