君がいた部屋~二階階段前倉庫~
「そうですけど。」
あたしは驚いた。
あたしは昨日有名になったのを忘れてた。
「俺、清水陽介。よろしく。」
「あの、」
いきなり何なの?
かよろしくってどういう意味?
「あ、ご免ご免。俺は君と同胞。」
そう言って彼は手首をあたしに差し出した。
両手首に、無数の傷跡。
「ヒャッ」
あたしは思わず跳び跳ねた。
古い傷もあれば真新しい傷もあった。
「そんなに踊らかなくても、君だって同じ事してるんだし。」
この人の言ってる事は正しかった。
あたしは人の事言えない。
自分だってやったんだ。
何を驚く必要あるのだろう?
すると彼はペットボトルをあたしに押し付けた。
「飲みなよ。」
あたしは頷いて水を一口飲んだ。
「少しは落ち着いた?」
「はい。」
「良かった。」
そうやって彼はニカッって笑った。
“陽”って字が似合っている、キラキラした笑顔だった。